初恋
20年に渡る初恋が終わった。
小学3年生で同じクラスになって以来、彼女のことをずっと好きだった。
所謂マドンナというやつだったと思う。
彼女が「朝の会」で紹介した文庫本のシリーズは、次の日にはクラスの男子に借りられて全て無くなっていた。
意地悪をして、泣かせてしまったこともある。その時ほど後悔で胸が苦しくなった。
彼女は5年生で転校していった。
引っ越しの日、今は名前も覚えていない友だちの家に遊びに行って、寂しさを紛らせようとしたが、さよならを言わなかった後悔に苛まれたのは言うまでもない。
中学1年生のころ、同級生の女子が彼女と文通している話を聞いた。
自分も手紙を送ろうと、住所を聞いたが恥ずかしくて書いた手紙も便箋も直ぐに捨ててしまった。
中学3年生、卒業前に買ってもらった携帯電話。文通をしていた女子から彼女のメールアドレスを聞いた。
短い文章と絵文字が語ってくるたびにたまらなく嬉しくなった。
高校2年の頃、5年ぶりくらいに電話で声を聞いた。興奮と緊張で胸が張り裂けそうだった。
彼女の声は変わらず、優しく、泣きそうなくらい可愛かった。
それからも、時間が合う時はメールや電話でやり取りをしていた。
大学に入り、僕は県外の大学に進んだ。彼女の住む街に少し近づいたが、それでもずっと遠いままだった。
1年生の夏休みに入り、彼女が地元に遊びに来ることを聞いた。
小学校の同級生を集めてもてなしたいと考えた。
みんなで集まって町内会の公民館で缶チューハイを飲んだ。
今考えると、あれが青春絶頂期だと思う。
それからしばらくは連絡を取る頻度は減ったけれど、SNSでその時々の近況を確認していた。
僕は大学院に進み、彼女は就職で東京の企業に就職した。
この時点で5年会っていなかった。
そして、学会で東京に行くタイミングで彼女とカフェに行った。
すごく大人になった彼女を見て、やっぱり綺麗だなあと思うと同時に、どうしようも無くこの人のことが好きなのだと想った。
そこからまた5年。
共通の友人の結婚式にて、彼女と再開した。
僕は結婚して、子どもにも恵まれた。
きっとまた彼女に会えば少しの間だけでも、浮つくかと思っていた。
ただ綺麗な人としか思えなかった。
たしかに可愛いし、ずっと好きだった人であることは変わりない。
ただ、昔ほど情熱を感じなかった。
嗚呼、僕の初恋は終わったのだと気がついた。
20年に渡る僕の片想いは、やっと終わった。